大人の分離不安 その2 幼稚園や小学校の頃
分離不安症ですが、思い返してみればいきなりそうなったわけではなく小学校や幼稚園の頃からその兆候はありました。
わたしの場合、分離不安症の子供によくみられる、朝、幼稚園などに行きたくなくて大泣きするということはまったくありませんでした。幼稚園や学校にはむしろ進んで通っていましたので、自分に分離不安があるなどとは思ってもみませんでした。
ただ、思い当たることはいくつかありました。一番印象深いのは幼稚園の頃です。病気で2週間ほど入院していたときがありました。面会に来た母が帰る時間になると毎回大泣きしていました。母は毎日会いに来てくれていたのですが。同じ部屋には違う病気で入院している子供も何人かおり、その一人に「僕より早く退院もできて、お母さんも毎日会いに来てくれてるのになんでいつも泣くの?」と言われたことを覚えています。
そして幼稚園や小学生ぐらいのとき、夜寝る前に「目が覚めたら高架下のお墓(自分一人で帰ってこられない場所)に置き去りにされていたらどうしよう」などと考えては不安になっていたことも覚えています。
さらに、家族や友達と買い物や遊びに出かけたときなど、彼らの姿が見えなくなるのが不安で行きたい方向に行けず、もどかしい思いをしていたのを覚えています。一瞬でも離れてしまったら最後、迷子になって二度と会えなくなるかもしれない……そう思うと、自分の視界の外に家族や友達の姿が見えなくならないよう、一瞬でも視界から離れることのないようにしていました。もともと好奇心旺盛な性格なので「こっちに行きたい」「あの乗り物にのりたい」と言って親や友達を引っ張っていくこともありましたが、子供にありがちな、自分から勝手に好きな方向に行くということはなかったと思います。
そんなことから、自分に分離不安があるとわかったときは、幼稚園の頃の入院で一時的に親と離れたことが原因だろうと思っていたのですが、カウンセラーとお話しする中で新たな発見がありました。それは4歳よりももっと前、1歳になるかならないかのとき、親戚の家に預けられていた時期がありました。両親いわく、その時のわたしは泣くこともなく、親戚の家にすんなり馴染んでいたそうです。親戚もすごくかわいがってくれたため、わたしも楽しかった思い出しかないのですが。
分離不安は、乳幼少期に母親(養育者)との愛着形成がうまくいかなかった場合に起こりやすいと言われています。とくに0歳~3歳までの養育者との愛着形成は、その後の心の発達、子が人生を生きていく中での「基本的信頼感」の形成にもつながってきます。
こんなことを書くと、分離不安は親の責任のように聞こえるかもしれませんが、一概にそうとは言えません。すべてにおいてパーフェクトな育児をできる親などどこにもいませんし、育児の過程では、環境や予期せぬ事情で親子の間にはさまざまなことが起こりうるものです。OCDの場合もそうですが、これらの不安を抱えてしまった子供の一人としてわたしが思うのは、これらの不安も自分が成長していくための課題のひとつだったと思っています。これらの不安と向き合うことで、自分の内面を深く知ることができましたし、それによって、以前よりも人の気持ちがわかる、共感できるようになりました。自分を成長させてくれたいい機会の一つだと思っています。